NEWS HP改訂に伴いますご挨拶

2012年7月吉日

画廊を始めまして12年が経ちます。この間、社会は様々に変化してきました。
画廊の周辺も同じ風景のように見えますが、随分変わりました。何よりも驚くのが、銀行の支店が一軒もなくなったことです。最寄り駅の日本橋2番出口の千日前通りと堺筋の交叉点は、黒門市場で買い物をした人が行き交います。東西南北の角に目印になる銀行が何軒もありました。それが今は、全部なくなり数行のキャッシングコーナがあるだけです。銀行の統合が行われ、支店も統廃合が繰り返され、最も立地のよいところのみに集中するようになったのでしょう。ネット社会もこの動きを後押ししました。

美術の周辺も十数年の中で変化しています。

ホワイトキューブの中で熟された現代美術の環境が変わりつつあります。現代美術の展示即売会、通称:アートフェアも盛んです。おしゃれなシティホテルなどで開催されれることが多く、都会的な建築、生活に近いインテリアの中でアートの提案が行われています。また、最近は、町おこしのイベントにアーティストが招待されるようになりました。そして、六甲ミーツ・アート芸術散歩など、自然とアートを一緒に楽しんでもらう企画も目白押しです。こういったイベントは、家族連れなどの一般のお客様の目を楽しませています。都会で成熟したアートが外へ外へとその周辺部に広がる様相を見せています。

さて、そういった状況の中、ギャラリーの役割はと常々考えます。

外へ外へ広がる企画は、打ち上げ花火のよう。ぱーっと大きく、華やかに開きますが、深く芸術を理解する場所でも、新しい美術を育てる場ではありません。
「見せる小屋」を構えてのギャラリーは、作品と作家の活動を積み上げていく場ではないかと思います。作家の作品は、昨日の作品があり、今日の作品があります。それらは、次の作品を予感させます。いい作品を造ろうと思えば、その積み上げの行為、作る習慣がないと出来上がってきません。何事にもいえることだと思います。

作家の活動は、作品の過去と未来の中にあるように思います。出来上がった作品は、作家にとって過去でが、現代美術の鑑賞者は、作家の未来を見ています。作品を買うということも同じで、作品の発展や作家の将来性を期待しての行為だと思います。

作品とは、個別性をもった多種多様な生き物で、誠に分かりにくい正体不明の物体です。
しかし、作家の活動も作品も”ギャラリー”という分類の箱(インデックス)に入りますと、なんとなくその正体が明らかになり、近づいてみようとするものです。

今回の改訂では、作家の作品のアーカイブ化に力を入れました。「見せる」「知らせる」のHPから情報を「貯める」、「引き出す」HPに方向を変えました。作家の活動の積み上げを見せていきたいと思います。また、不定期ながら開催しております「評論を書くことを考えてみる会」から芽を出した”美術を伝える言葉”も大切に記録して、いつでも読んでいただきやすいようなHPにいたしました。

作品の販売も、以前のHPと同じように楽しんでいただけるようにしたいと思っております。

Gallery AMI-KANOKO
中島由記子