2013年1月、タイ在住の木版画家、Ralph Kiggellが、タイ北部のFang村に住む少数民族の子供達と木版画のワークショップを行いました。
3回のワークショップで50人以上の子供が参加し、その中から44枚の作品を展示いたします。
Fang村は、タイ北部、ミャンマーと中国の雲南省、ラオスの国境に接しています。ラルフが教えた子供達は、そこに住むShan族、Lahu族、Palaung族の子供達です。
Shan族は、もともと中国雲南省にルーツをもち、現在は民族の大多数がミャンマー北部で暮らしています。(約400万人と推定されています。)現在、ミャンマーの治安は悪く、道を歩く子供達は常に軍隊に入るよう勧誘されるため、安心して外出することもままならず、学校も閉鎖されています。内線により住む場所を奪われた国境近くのShan族は、ミャンマー政府の圧政から逃れ、安全な生活を求め、国境を越え、自分たちの村を後にしました。
タイにやってきた彼らの仕事は、Fangの広大な丘に広がるオレンジのプランテーション農業で、果物を収穫することです。タイは、ミャンマーよりも治安はいいものの、仕事は低賃金のものしかなく、国籍がないため、医療を受けることが出来ず、地域の学校に通うことも出来なません。その上、女性や子供は常に人身売買される危険に常に瀕しています。そんな子供達を励ます目的と、教育の一つの機会として、ワークショップが開催されました。
本の木版画技術で制作されました。日本の木版画技術は、持ち運びしやすく、彫りと刷りの面白さがじかに体験でき、その上に、後始末も簡単です。
Lahu族、Palaung族が通うMoon light school(夜間学級)では、2時間しかワークショップに時間がとれませんでした。そこで、子供達が作業しやすい、リノリウムやプラスティックの板に彫り込みを入れ、制作をすることにしました。また、紙は事前に水に浸し、背景の色を刷っておきました。こうすることで、制作の時間が短縮され、多色刷りの作品を子供達は愉むことができました。Lahu族の一人の女の子は、小さな自分の妹を膝に座らせたまま、一生懸命作品を作りました。夜間学級のため、教室は暗く、制限された時間の間でしたが、子供達は立派に一つの作品を作り、作業のおもしろさや出来上がった作品に、心をときめかせました。
the daylight school(昼間学級)に通ってくるShan族の子供達は、制作する時間が2日あったため、版木を使い本格的な木版画に挑戦することができました。一日目は、版木に好きな題材のイメージを木板に彫り、二日目は版木の上にインクを載せ、刷って作品を作りました。
教室に参加した一人の男の子Kham Bang君は、天性の才能があったようす。初めから紙に転写されたイメージを頭の中につくり、初めてというのに、上手に版木を彫り進めることができました。複数の色を版木に置き、青い空に飛ぶ青い鳥の作品をつくりました。Kham Bang君の作業を見た子供達は、そのやり方を見習って、複数のインクを版木の上に載せ、生き生きとした作品を作ることが出来ました。