1969年生まれ、1990年大阪芸術大学付属大阪美術専門学校研究科修了。日常の都市風景や身の回りに無数に存在する工業製品に潜む絵画的要素の発見体験に基づき、絵画を制作している。
以前、仕事帰りに、ビル群の窓ガラスに映る夕焼けを見た時、美しさを感じると同時に不思議な感覚を覚えた。私は今夕焼けを見ているのか?窓ガラスを見ているのか?窓ガラスに映る夕焼けは、振り返って見た夕焼けとは色彩も違い、距離感も全く異なり、そしてガラスの質感も加わって、とても曖昧なものだった。強く心をざわつかせたのは、もはや夕焼けの美しさでも、ガラスの透明感でもなく、夕焼けの色彩とガラスの物質感とが渾然一体となり、変容した「何か」であり、まだ名前もない「何か」だった。それは、無意識の中にあった「何か」だったと言もいえるだろう。そのような感覚は、例えば、綺麗に塗装された車のボンネットに映る光線や、夜の揺らめく川面に映る街の灯り、ガラスに映る自分の姿と透過して見える向こうの風景からも、呼び起こされる。私は、その形容することが難しい「何か」を絵画を通して作っている。色彩、物質性、透明性、光沢性の要素をコントロールしながら、それらが等価値に存在する時、新しい「何か」へ変貌する。 そして、私の作る絵画に、観る人の主観的なイメージが重なった時、それもまた、規定(共通)のイメージを持たないという意味で、新しい「何か」だ。私は、普段目にしているものが、規定のイメージに囚われ実際に見ていないことがあることを、絵画を通じて意識化させるのである。