ギャラリースタッフ:天岸藍子の展覧会一言コーナ

現代美術って分かりにくいですよねえ。
ギャラリーの人に見方を教えてもらったり、作家と話す機会がもてたとき、”あっそうか!”と稲妻のように作品のことが分かったりします。
ギャラリースタッフの天岸藍子が、展覧会についての文章を書きました。
参考にしてください。
■松本 央
■コイズミ アヤ

コイズミ アヤ

山と隧道と内蔵膣       ぎゃらり かのこ / 2007,6,25Mon-7,7Sat


コイズミさんは東京で作家活動をされる二児のお母さんです。四角い木製の白い箱の中にあおあおとした山並みや草原のジオラマを作り、テーブルに置かれて設置されています。その側面にはどの箱にも長方形や正方形の形の穴がそれぞれの箱にひとつずつ開けられています。

今回作られた作品は山に開いたトンネルの入り口を奥多摩で見た事から思いつかれ、そこで得た感覚を活かして内と外、そこにある関連性を形にされています。

ジオラマを上から眺めているうち、箱の横にある穴に気付き、なんだろうと興味深々で覗いてみると箱の向こう側まで四角い穴が道をつくって抜けており、ほのかに向こうの光が見てとれます。白塗りの板やジオラマに作られているこれも白色の、塔の様に足長の小さな椅子が均衡をもってつくられ円になるように並べられています。素材は暖かさのある木であるのに、普段目にする事のない形を作り出していて異空間的な要素が含まれている様な感じを持ちました。

作品は大きなものでも縦60cm×横30㎝×高さ40㎝程で低い位置に設置され、見下ろす視点で見る事になります。ジオラマの山並みをずっと続けられているのではなく、いくつも木箱をつくり、ところどころの地点やそのイメージを表現されているのが特徴的です。展示を立って眺めているだけではガリバーになった様ですが、小さなトンネルの穴を覗く時頭をかがめて作品に近づく事で、小さくなっている自分を体験する事ができます。

自然の中に人間が作り出したものから得たイメージを活かし、模型を使う事も手伝って、その具現化が四角のかたちによってさらに強調されて展開されていると思います。トンネルを覗く事で向こうの世界にある広がりを考えさせ、小さく単純な不思議な白い箱の穴から別の次元へ行けるような、空気感のある作品でした。

松本 央

Who Are You?      画廊 編   2007,6,25Mon-,30Sat   油彩 肖像画              

松本さんは現在京都精華大学に通う造形学科洋画専攻修士の一回生です。この展覧会で見られる作品は、すべて本人の肖像画です。作家自身のいろんな表情を、胸像からほぼ等身大の立像、赤ん坊の頃の姿などを描き展示しています。

ギャラリーの真正面にはコンビニ-セブンイレブンの制服に身を包み、自分の前で手を合わせてレジの前で立ちこちらを見る作者の肖像画が展示されています。作家である自分とバイト店員である自分の違いが油絵のテンペラ技法で描かれています。とてもリアルで描かれているその人が迫ってくるように迫力を感じます。

同じ人物の肖像画はそれぞれ違う雰囲気をもっています。店員の時は少し商売っ気のあるすました表情をしています。制作に挑んでいる肖像は自分を映す鏡も描きこみ、ドラクロワの集団肖像画に描かれている構図を連想させ、松本さんに向かい合うものが鏡だという事におもしろみを感じます。正面向き、ななめで帽子をかぶった姿、どんな暗い部屋で描いたのだろうと思わせる陰影のついた自分などもあり、ここでもドラクロワの光と影の表現効果を追求したのではと思います。ひとつの画面にロックな服装に着飾っている自分を何人も並ばせたものは同じ人が同じ画面にいる奇妙さとその展開のコミカルさに見る側を楽しませます。作品すべてが自分自身を描くというコンセプトを持ち今の社会を映し出す事が出来、今を生きる作家との位置関係を表現しているように感じます。

この展示で見られた作品は古典技法のテンペラ技法を使っています。鶏卵で油絵の具を溶き、石膏と膠でつくる地塗りに描く事でクリアな描画で人物を再現する事が出来ます。かつて宗教画から始まり、15世紀、ウ゛ァン・ファン・エイクが確立した西洋絵画にあるテンペラ技法ですが、そのものを利用して自身を描く事は今の作家自身を長い美術の歴史の中に投じつつ、彼自身に描かれた彼がその先を何か少しずつ見据えている様でもありました。