no title

中澤菜見子

仲瀬氏の作品を見た時、私は、なにか、邪気があるなぁという感じ、ミスマッチな感じ、 そしてどこかで見たことがあるような、すこし懐かしい感じを覚えました。邪気がある、という感じは、モチーフの表現によるものと思われます。例えば、すべての作品に登場する子供や、おもちゃといったモチーフは、普通は無邪気でかわいらしいというイメージでしょう。しかし仲瀬氏の作品においては、おもちゃなどの無生物にも眼や口が描かれていますが、それらの眼は見開かれ、眉間にしわが寄り、歯はむき出しにされています。全体の灰色がかった色彩や、ぬめりのある陰影ともあいまって、かわいらしいはずのモチーフが、悪意のある生物であるように感じられます。ミスマッチな感じについては、異質な要素の混在、という原因が考えられます。共通の主要なモチーフとしてある、子供とおもちゃですが、それらの色彩や形状は、日本のものというより、アメリカの子供やおもちゃ、といった様子です。そしてそれらのモチーフを取り囲む金雲、煙、火炎、水流や蓮の花の描き方は仏画のそれを参考にしていると思われますし、画面隅に見られる印相や子供の手の指の形などは、より直接的に仏教的な要素であると言えます。また、所々に見られる細長い形状の岩石や、何かが垂れ流れているような白色の部分は、男性器を彷彿とさせます。この、三つの要素、すなわちキッチュな子供とおもちゃ、仏教的なもの、性的なものは、画面構成上はうまく融合されていて違和感はありません。しかし、やはり異質なもの同士が混在しているため、どこかちょっと変な感じを、見る人に与えています。最後に、既視感について考えてみましょう。さきほど、普通はかわいらしいイメージの子供やおもちゃが、邪気のあるように感じられる、と言いましたが、実はそういうことは、私たちの誰でもが一度は、とくに子供のころに体験したことがあるのではないでしょうか。例えば、ピエロを怖いと感じたり、人形が襲いかかってくるのではないかと思ったり、ということです。そういった、昔経験した恐怖、のようなものが、ここでは思い出されているような気がします。背景の、青空に浮かぶ白い雲、その白の中に混ぜられたオレンジや緑といった色が、画面全体をよりノスタルジックにしていると思います。子供やおもちゃ以外の重要なモチーフとして、きのこと歯があります。それらには大きな眼が一つ描かれており、子供やおもちゃよりも、わりとしおらしい様子をしています。私はこの歯が、子供とともに描かれることによって、乳歯を連想させると思います。そのような点も、なつかしさを引き起こす一因なのかもしれません。