布のブリコラージュ: あんな布・こんな布 

2021.06.01 - 2021.06.12 [ Ami-Kanoko ]

あさうみ まゆみ
[布] [陶器]

2021/6/1(火)~6/12(土)
会期中の休廊日;6/6(日),7(月)

12:00~18:00

「布のブリコラージュ」 あんな布・こんな布
古布に導かれ、自由気ままな物語が生まれました。

あさうみまゆみ

大阪府枚方市生まれ、丹波篠山育ち。愛知教育大学で陶芸を学んだ後、帰郷し美術館等に勤めながら作陶を続けるも、いつしか興味が赴くままにいつしか身近な様々な素材の形や質感に触発され造形活動を行うようになる。プロフェッショナルにもマイスターにもなりきらない永遠のブリコルール(ありあわせの材料で物を作る人)を邁進中。現在、兵庫教育大学(美術分野)教授。

 

布のブリコラージュ(本展作品について)

家族の古着、リビングに掛かっていたカーテン、ソファーのカバーなどなど、かって我が家の日常の中で活躍してきた布地をブリコルールしました。シミやホツレを避けたり活かしたり、布地の帯びる経年変化は私の想像力を大いに刺激してくれます。と同時にこれらの作品は何気なくも過ぎ去った懐かしくも愛おしい時間と記憶をつなぎとめてくれています。

私が針と糸で作るわけ あさうみまゆみ

洗濯物干しが好きだ。洗濯物干し以外でも家事全般がちょっと好きだ。なぜなら楽しいから。例えば洗濯物干し、天気予報をチェックし、まずその日の気温と風向をよむ。洗濯物の形状と素材を吟味し、干す場所と干し方を考える。それをいかに効率的に短時間で出来るか。時としてにわか雨にしてやられる危険もある大変知的でスリリングなゲームだ。はたまた冷蔵庫にあるもので、いかに美味しく、栄養があるものが、手軽に作るか。このミッションも最高にクリエーティブな燃える作業だ。おまけにこのゲームの成果に時折家族から感謝され時には称賛を受けるというおまけがつく(極たまにだけど)。これ結構嬉しい。なので家事が労働してお金に換算されたりすることにちょっとした違和感を感じる。これ労働なの?そんなに大変で七めんどくさいことなのか?もちろん世の人が皆自分と同じとは思わない。家事的な作業を苦手で苦痛な人もいるだろし、それを強要されて嫌な思いをしている人もいるだろ。でもそういう作業が「楽しい」と感じる人間も確かに存在するのだ。そして私は「しっかりと飯を食わせて 陽にあてし 布団にくるみて寝かす幸せー河野裕子」この歌に強い共感を感じるタイプの人間なのだ。最近そういう「家庭的な作業」を大ぴらに好きということを憚れる風潮を感じている。なんだか家や男性に隷属的な旧式のダメ女というようなレッテルが貼られそう、うっかりとポリティカル・コレクトネスのコードに引っかかって攻撃されちゃうんじゃないかという恐れ。

女性の仕事といえば、インドの刺し子、カンタは素晴らしい。古いサリーや男性のドウティーを重ね糸を刺し、敷物や赤ちゃんのおくるみに生まれ代わったものだ。デザインは楽しくて自由で生命感に溢れている。女性たちは家事の合間に針を持ち糸を指す作業を何よりも喜びにしているという。日本の東北地方のボロを縫い合わせた刺し子の美しさにも圧倒される。女たちはわずかな蓄えの中から糸を買い、ひと針ひと針大切に縫っていったそうだ。私はカンタや日本の刺し子をその背景に家事労働に忙殺された貧しい健気な女性たちの存在があるから素晴らしいと言っているのではない。だって最初に図版でカンタをみて「なんじゃこりゃ、すごく良い!」と思い、何ものかと調べた。ボロの刺し子の時もそうだ、「なにこの力強いアートは!誰の作品?」と思ったのが最初。そしてその作り手が同じような境遇の女性だと知った。いやカンタや刺し子だけではない世界中の女性と針と糸には皆共通した輝きがある。もうちょっと範囲を広げるなら「縄文土器」あれは、女性の手によるものだとされている。本物を見るとそのパワーと造形力に圧倒される。ほとんどの現代彫刻や陶芸作品は足元にも及ばない。縄文土器とアートとして見出した岡本太郎は本当に偉い。だからと言って、同じようなそんな素晴らしい作品が作りたいが故に家事に勤しみ、大学で様々なお仕事をさせていただき(!)、その合間の時間に針と糸で作品を作っているわけでも、子どもが生まれて制作の時間が取れなくなって時間の制約が大きい陶芸から針と糸の作品に移行しわけでも、住んでいる処が田舎すぎて周囲に生地屋もなく、おまけにたいして金もないから家族の古着を素材にしているわけでもない、いやそれだけではない。ただ、身の回りにあるもので、制約という神様の下で何かを生み出そうとする時、不思議と色々なイメージが閃く。そしてとびきり楽しくワクワクする。針と糸の作業は「心が鎮まる」効果があると言われている。繰り返し作業を行う中で脳内に安定ホルモンであるセロトニンが分泌されるからとされる。これは瞑想、メディテーションを同じ作用だ。もしかしたらその効果で心の奥底からイメージが浮かび上がってくるのかもしれない。

さて少々冒頭に立ち帰ろう。特段フェミニストでもなく、普段はジェンダー問題にも比較的無関心な私だが、女性の手仕事が手工芸などと名前を冠されファインアートと呼ばれるようなものより一段も二段も下に見られているのはとってもとても不思議だ。こんなに美しく、素晴らしいのに。もっとみんな未だ根強い男性WASP的文化以外のものに美しさや価値観を見出すべきではないだろうか。


あさうみまゆみ

略歴

大阪生まれ
 9歳の時に兵庫県篠山市今田町に家族と共に移住
 愛知教育大学大学院美術教育立体造形修了

主な個展

1999 「あさうみまゆみ造形展夢の台」ギャラリ安里(名古屋市)
2000  「浅海2000 Project」 ギャラリーマロニエ(京都市)
2003  「Row Row Row Your Boat」ギャラリーろ偶(神戸市
2004  「Walk On The Water」ギャラリー堂島(大阪市
2007  「あさうみまゆみの造形展」川のほとりの美術館(姫路市)
2011 「今宵の宙」画廊 編  ぎゃらり かのこ(大阪市)
2012 「冬眠前のなかまたち」画廊 編  ぎゃらり かのこ(大阪市)
2014 「Seasons」モトコー博物館♯183(神戸市
2016 「ふゆのカルナヴァル」画廊 編  ぎゃらり かのこ(大阪市)

主なグループ展

2007 神戸ビエンナーレンナーレ アートインコンテナ国際コンペティション(神戸市)
入賞・審査員特別賞(古巻和芳+あさうみまゆみ+夜?工房)
2009 丹波篠山まちなみアートフェスティバル(篠山市)以後毎回出展
2013 神戸ビエンナーレ アートインコンテナ国際コンペティション(神戸市)
入賞 『コーヒー豆の旅 SANTOS-KOBE』(あさうみまゆみ・河南誠
2014  震災から20年 震災記憶美術 BBプラザ美術館(神戸市)

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